MUST-SEE ART | 中村哲也『GO FIGURE』@NANZUKA UNDERGROUND
2025.06.30

理解不能が美を呼ぶ、機械と有機の境界

HONEYEE.COMが、今見ておきたいアート展を毎週金曜日に紹介。この「MUST-SEE ART」を参考に、今週末の“To Doリスト”に加えてみては?

Tetsuya Nakamura カルノー人 Carnotite 2025

子どもの頃に憧れた自動車やバイク、そして怪獣たち。大人になっても、その“かっこよさ”や“謎めいた存在感”に、心奪われることも少なくないのではないだろうか?東京・渋谷の「NANZUKA UNDERGROUND(ナンヅカ アンダーグラウンド)」で、2025年6月28日(土)からスタートする、アーティスト・中村哲也が最新個展『GO FIGURE』で示すのは、人間を普遍的かつ根源的に魅了する、そんな感覚を呼び起こす彫刻群。

現在、長野を拠点にする中村は東京藝術大学大学院美術研究科で漆芸を学び、伝統工芸の素材や技術を再解釈しながら、視覚的な情報が生物に与える影響をテーマに、様々な形態の彫刻作品を発表し続けてきた。

1998年から展開するジェット機型彫刻『レプリカ』シリーズに始まり、カスタムペイントカルチャーのウェザリング技法を思わせるロボット作品、さらには動物や植物、怪獣といった生物を想起させる造形物は、そのどれもがスピード感と改造文化の美学を物語っている。

今回の展示では、1階に大型の乗り物型彫刻『フレアライン』シリーズの最新作が登場し、2階には中村が近年力を入れてきた『炎獣』シリーズが並ぶ。機械工学的なフォルムと自然の有機的な美しさがせめぎ合い、どこか生き物のように呼吸を感じさせる造形美に目を奪われる。

Tetsuya Nakamura ミメット人 Mimetite 2025

展覧会のタイトルとなった『Go Figure』は、“理解不能”や“不思議”を意味するスラングに由来し、美的な対象にふれたときの恍惚感は、常にどこか謎めく。怪獣やバイクといった、一見子どもっぽく見えるモチーフに秘められた“実用性のない咆哮”。その無駄に見える美しさに、中村が本展に込めた想いが表れているのかもしれない。

Tetsuya Nakamura 炎獣エルゴン ドローイング Drawing “Flame Beast Elgon” 2025(左)
Tetsuya Nakamura「次雄」ドローイング Drawing “Tsugio” 2025(右)

なお会期中には中村が今回の制作にあたり描いたドローイングを集めた『GO FIGURE Drawing』展も、7月2日(水)から「鮨さいとう はなれ NANZUKA」で開催。

「理解不能を理解するからこそ惹かれる」。そんな“Go Figure”な魅力を、ぜひ会場で体感してみてはいかがだろう。

<Information>
中村哲也『GO FIGURE』
会期:2025年6月28日(土)〜8月2日(土)
会場:NANZUKA UNDERGROUND 東京都渋谷区神宮前 3-30-10
営業時間:11:00〜19:00
休館日:日・月曜日