デスティネーション・ストア | File 015
2023.05.12

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 015 : ayame optical store(東京都・千駄ヶ谷)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 015はこのほどリニューアルオープンをした ayame の直営店 ayame optical store。

Text Takaaki Miyake

2019年のオープンから初のリニューアル

原宿や表参道からほど近い立地にありながらも、都心の喧騒を感じさせないのが千駄ヶ谷という街が持つ顔だ。日本が世界に誇るアイウェアブランドの ayame は、その地に2019年から直営店の「ayame optical store」を構え、今年3月にリニューアルオープンを果たした。

「元々この店をオープンしたのは、ブランドが10周年を控えているというタイミングでしたが、当時はどういったお客様が ayame を愛用してくださっているのか、実は全てを把握しきれていない状況でした。取引先だけだとフルラインナップで紹介することができないこともあり、もっとayameを知っていただきコミュニケーションを図ることが目的でした。なので、2019年の当時は少しでも早くオープンしたくて最低限の設備で始めました」

ayame のファウンダーでありデザイナーでもある今泉悠さんがそう語る一方、オリジナルの店舗設計は事務所で使用する什器を作っていた TRIPSTER が手がけ、全面ガラス張りの店は間違いなくブランドの哲学を反映している。すでに完成されたように思えた空間だが、オープンから4年弱でのリニューアルとなった今回。どのような思惑があったのか、そしてなぜ千駄ヶ谷という地をそもそも選んだのか。

時の流れがゆっくりな街

現在のスペースを構える以前、ayame が263日間限定のポップアップストアを青山にオープンしたことを覚えている人も多いのではないだろうか。ブランドの旗艦店ともなれば、そういったネームバリューのある場所や人が賑わうエリアの方が​​一般的には好ましいと思われがちだが、あえて場所を移したその理由とは。

「もちろんショッピングエリアなので青山も良い場所でしたが、時間の流れが早すぎて疲れてしまい。だったら『ゆっくりと ayame のアイテムを見てもらえる場所に作ろう』と思い、それが千駄ヶ谷だったんです。Wonderwall​​ の片山(正通)さんも近くにオフィスを構えていて、前々から『良い場所だよ』と聞いていたので、それも決め手でしたね。他のエリアでも探していたのですが、偶然今の場所を見つけてココにしようと。​この辺りは​ちょうど良い静かさで、開発や時代の流れにも影響を受けることが少ないのも魅力だと思います。

デザインやファッション関係のオフィスも周りに多いので、そういった方々も来てくださいますね。お店の近くに車を停めやすいので、それも気軽に来店していただける理由の一つかもしれません。ただオープン時から変わらず意識しているのは、地域に根付いたお店の運営です」

顧客と働き手ファーストの店舗づくり

これまでは店舗のバックヤードを事務所として使っていたが、真上のフロアが空いたことがリニューアルの最大のきっかけに。既存のベンチに加え店内の椅子も増設し、店内の照明にもこだわった。太陽光と近い3500ケルビンのライトを使用し、常に自然光に近い色味レンズをセレクトできるような空間を演出している​​。

「今回はリニューアルというよりも、お店のメンテナンスに近い感覚だったかもしれません。お客様がよりリラックスして快適にお買い物を楽しめるように、そしてスタッフが今まで以上に働きやすいような環境作りを目指しました。具体的には検査室やメガネの加工スペースを拡張したり、ハードコンタクトの付け外しがしやすいように洗面所を設けて全面鏡を増やしたりと。そのアイデアのほとんどは売り場から挙がってきた声です。

また、少しづつ移りゆく変化も楽しんでもらえるように、週変わりの盆栽もディスプレイしています。ただそれはあくまでお客様がどう感じていただけるかだと思っています。元々アイウェアのデザインにも特定のテーマは設けていません。それは ayame というブランドが何を求められているのかを重視しているからです。作りたいモノづくりを単純にすると、それはある種デザイナーのエゴになってしまう恐れがある。アイウェアは洋服よりもよりパーソナルな存在で、誰かにかけてもらって初めて成立すると考えているからです」

目指したのは街の眼鏡屋

驚きなのは「ayame optical store」でオープン当初から一貫して行っている、あるサービスだ。なんと同店では ayame 以外のブランドで購入したアイウェアでも、修理やレンズ、フレームの交換などを受け付けている。通常、こういった相談は購入したお店に持ち込むのが暗黙のルールだが、この背景には今泉さんが目指すお店の姿があるからだ。

「やりたいのは街の眼鏡屋。修理対応などもやっているのはそのためです。実際に一度他のお店で断られた方もいらっしゃってくれて、『ayame のお店に行けばなんとかしてくれる』みたいな、駆け込み寺的な存在になっています。修理の過程で何かあったらというリスクも理解はできますが、僕らはアイウェアのプロが集まっている限りは、そのリスクを負うべきだと考えています。

オリジナルのレンズも豊富に作っているので、ayame 以外のフレームでも交換もやっています。アイウェア自体を楽しんでいただきたいので、業界全体を見据えてこの取り組みが良い方向に進めば嬉しいです」

その精神はまさに“街の眼鏡屋”そのもの。そして今後よりローカルなお店作りをする上で、考えていることを聞くと、まさにその精神の通りの答えが返ってきた。

「例えば来店されたお客様に周辺のオススメのお店やご飯屋をご紹介できれば良いなと思います。このエリアに根ざしている以上はアイウェアだけでなく、お客様一人一人に対して街の案内人的な存在になれると良いなと」

今後は幅広いラインナップが日本国内外からでも購入できるよう、グローバルに対応するECサイトの立ち上げも考えているという。現在もすでに遠方や海外からの問い合わせがあり、ayame の人気度は日々増すばかりだ。しかしデザインや品質はもちろんだが、その親しみやすさも多くの人から愛される理由の一つなのかもしれない。

DESTINATION STORES | File 015
アヤメ オプティカル ストア | ayame optical store

渋谷区千駄ヶ谷3-52-5 原宿ニュースカイハイツアネックス102
営業時間 : 11:00〜20:00(水曜定休)
TEL:03-6812-9119
http://www.ayame-id.jp/
https://www.instagram.com/ayame_id/