デスティネーション・ストア | File 016
2023.05.26

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 016 : #FFFFFFT(東京都・千駄ヶ谷) 

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 016は世界でもココにしかない白無地Tシャツの専門店 #FFFFFFT。

Text Takaaki Miyake

店内には白無地Tシャツのみ、常時70種類以上が揃う

前回の ayame optical store から歩いて行ける、もう一つの千駄ヶ谷のデスティネーション・ストアが「#FFFFFFT(シロティ)」だ。HTMLカラーコードで表記された店名はなんともユニークだが、オーナーの夏目拓也さんはその名の通り“白Tフリーク”として知られる。そう、「#FFFFFFT」は白T好きのオーナーが白Tのみを取り扱う専門店なのである。「好きが高じて仕事に」とはよく言ったものだが、これほどまでにストレートな例は珍しい。2016年4月にオープンし、現在8年目に突入した同店だが、一体どのようにスタートしたのか話を聞いた。

「とにかく白Tが好き過ぎて、定番からコンビニのPB、ラグジュアリーブランドまで、これまで膨大な種類の白Tを集めては試してきました。それにもかかわらず“白T専門店”というのが世界中を探しても見つからず、『それなら自分でやろう』と思ったのがこのお店を始めたきっかけでした。

立ち上げ時はSunspel や FRUIT OF THE LOOM、Goodwear など25種類ぐらいでスタートしましたが、現在は国内外・有名無名を問わず、様々なブランドから常に約70種類が店内に並ぶ状態です。こだわりは商品構成を毎週変えていることで、全く同じラインナップが二度と存在しないお店作りをしています。累計だとこれまで400種類以上のアイテムを取り扱ってきました」

究極までにシンプルゆえの尖ったコンセプト。お店のフックとしては魅力的だが、仕入れを希望するブランド側から理解を得る苦労などはなかったのだろうか。

「やはり白T専門店という概念が、どこにも存在しなかったので最初は驚かれましたね。それに自分のバックグラウンドが広告業界だったので、最初はファッション業界でのつながりもなく、各ブランドの問い合わせ先から毎回コンタクトをしていました。それでも意外に面白がってもらう場合が多くて、嬉しかったのを今でも印象的に憶えています」

専門家ゆえのキュレーション力

一概に“白T”と言えどその世界はかなり奥深く、もちろん世には無数の白Tが存在するわけだが、そんな膨大な選択肢からどのような基準でセレクト、そしてラインナップの入れ替えをしているのか。

「まず大前提として、自分自身が本当に着たいと思えるかが重要なポイントです​​。白Tに関して言うと正直ブランドのネームバリューは強いけど、モノやプライスに疑問が残るアイテムも多いと思います。ここではブランド名を隠しても、納得して選んでもらえるようなアイテムだけをセレクトしています。そして国内外から色々なお客様がいらっしゃるので、このアイテムは『こんな人に刺さるだろうな』というように、お客様の顔が浮かぶのも重要なポイントです。

もちろんこれだけの種類が揃う中で、結果として中々売れないアイテムも多少は出てきます(笑)。ただしいわゆる売れ筋のアイテムだけでなく、売れにくくても作り方とかにこだわった、かなりマニアックなモノもラインナップには必ず入れておきたいんです。そういったアイテムのバランスはすごく意識していますね。同時に似たようなアイテムばかりを並べて、足を運んでくれたお客様を悩ませないようにも心がけています」

白Tオンリーのラインナップが揃う店内だが、一枚一枚のTシャツはたしかに似て非なる。ヘビーウェイトのポケTのような人気アイテムばかりを揃えることもできるはずだが、そのカテゴリーの中でもコレという専門店が選び抜いたお墨付きのアイテムだけがキュレーションされている。

白T専門店の真骨頂

セレクトから始まった「#FFFFFFT」も、近年は別注やコラボレーションも積極的に行っており、さらなる懐の深さを見せている。それは長年をかけて白T専門店が広く認知され、ブランド側からも一目置かれる存在となった証だろう。

「今では全体の三分の一以上は、ここでしか買えないエクスクルーシブなアイテムとなっています。最近は Los Angeles Apparel さんや INTÉRIM さんとも別注を企画しまして、大変好評です。念願が叶い白T界のレジェンド、吉田栄作さんとのコラボモデルも作らせていただきました。」

別注の土台として白Tを考えると、絵画に例えるなら真っ白なキャンバスのように最高の素材のように思える。しかしあくまで着ることを考慮すれば、可能性は無限なようで、意外に制限も多い。とりわけ「#FFFFFFT」では、プリントは使わず、あくまで無地主義のスタイルを貫く。

「ウチではもちろん白Tにこだわっているので、プリントモノはやりません。特例で白の刺繍をやったぐらいで、基本的には無地オンリーです。別注の際は、特に手をかける必要がない部分は『いじってもしょうがない』と思っています。無理矢理やってウチのネームタグだけ付けても自分が納得できないので、別注をやる意味があるアイテムしか作りません。

例えば INTÉRIM さんとのコラボレーションは、ヘビーウェイトなのに光沢があるプレーティング生地が個人的にとても気に入って、その生地自体をウチのエクスクルーシブにしてもらいました。その生地をベースに、ポケTやハイパービッグT、ロングスリーブTなどを展開しています」

生地やシルエット、ディテールなどコラボレーションの入口は様々だが、そのベースとなるアイテムのポテンシャルを引き出すことに徹底している。

「吉田栄作さんモデルは WHO'sMAKING というブランドのオリジナル生地を使って、栄作さん本人と話しながらパターンからゼロベースで作りました。いまだにオーバーサイズがトレンドな中で、ジャストの肩幅でカッコよく着られる一着に仕上がっています」

7周年で解禁したあのアイテム

自宅には数えきれないほどの白Tを所有する夏目さんは、普段も白Tに合うアイテムをつい買ってしまうほどの真のマニアだが、意外にもオープンからあえてアレだけは封印していたという。

「実は7周年記念のタイミングで、ついに初の完全オリジナル白Tを今年の4月にローンチしました。その第一弾が“デニムのための白Tシャツ”です。もちろん究極の白Tと言われて思い浮かべるものは人それぞれ違いますが、“〇〇のための白T”だったら究極形を作れる自信はあったし、元々アイデア自体はコロナ前から温めていたんです。

構想期間が長かった分、今回できたアウトプットにも満足していますが、新しい定番としてちゃんと育てていきたいですね。オリジナルは今回だけで終わらせずに、シリーズ化していきます。理想の一枚と出会う体験そのものが#FFFFFFTの価値の本質だと考えているので、白Tマニアの方でも、自分では何を選んだら良いかわからない白T迷子”の方でも、どんな方にでもそういった出会いを提供していければ良いですね

夏目さんも繁忙期だと言う、まさに白Tが一番必要とされるこれからの季節。夏本番がやってくる前に、自分だけの一枚を探しに「#FFFFFFT」を一度訪れてみては?

DESTINATION STORES | File 016
シロティ| #FFFFFFT
東京都渋谷区千駄ケ谷2丁目3-5 1F
営業時間 : 12:00〜19:00(土)、12:00〜18:00(日)
TEL:03-6804-5746
http://www.fffffft.com/
https://www.instagram.com/fffffft_sendagaya/